2013年8月21日水曜日

絵のお医者さん

皆さんは絵が好きですか?
先日、横浜美術館で開催されているプーシキン美術館展を見てきましたが、
夏休みといえども、真夏の暑い平日。にもかかわらず沢山の人で混雑しておりました。
日本の美術館の企画展は大抵いつも混雑している印象がありますし、
そう考えると日本の多くの人が絵を見る事が好きなのだと思います。

今日は、展示を見た後にミュージアムショップにて見つけた一冊の本を紹介したいと思います。
『モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん  
                                                             修復家・岩井希久子の仕事』/美術出版社

そのタイトルからも分かる通り、修復家である岩井希久子さんの著書です。NHKの『プロフェッショナル  仕事の流儀』やBS日テレ『ぶらぶら美術館』にもご出演なさっているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は大学で岩井さんのご主人の岩井壽照先生に習ったことがあり、卒業してからたまたま見ていたNHKの番組で、奥様が修復家である事を知りました。その時にも大変立派な方だとえらく感激したのですが、本を読み進めるうちに更にその想いを強くしました。

修復家の仕事について、内容も分かりやすく丁寧に書かれているのですが、何よりも強く伝わってきたことが絵画や伝統工芸、そういったものに対する日本人の文化意識の向上を訴える言葉でした。
形あるものは必ず、年月が経つと傷みが出てきます。絵もモノですから、やはりそれはまぬがれません。そこでイギリスやフランスなど海外の美術館には専門の修復機関が置かれているそうです。そうした海外では当たり前のそれが日本の美術館ではないことの方が圧倒的に多いうえに、あまつさえ保管環境が整っておらず単なる倉庫と化していることも珍しくないようです。そして、修復で使われる道具の中には、和紙や刷毛といった日本の伝統の道具もあるそうなのですが、それを作る職人さんがいなくなっている事は、昨今いろいろな場面で耳にする話です。
更に最も深刻なのが多くの日本人がそうした自分たちの文化レベルの低さに気づいていないということでした。

岩井さんの言葉を読んでいると、端々に絵に対する愛情と作り手の想いに寄り添う温かさを感じます。私たちには絵を治療することはできませんが、日本にある絵画が置かれている現状を知ることはできます。名画がいつまでも名画であり続ける為には、維持をし管理をする人が必要です。そして、そういう人を望む多くの人の想いがなければできないことなのです。一人一人の意識が変われば、日本の文化も真の豊かさを手に入れることができるのかもしれません。

最後にもういちど。
皆さんは絵が好きですか?



本日の担当は福井でした。

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