昨年導入された1000系車両は、台数は増えつつあるらしいがまだ少ない。円みのある車体は、これでもかというくらいのつややかな黄色をしている。
銀座線は東京の地下鉄の最古参だから、他の路線に比べ構内の造りが小さいと聞いたことがある。ホームの壁も床も概ねグレー。
黄色い車体は、その狭い構内いっぱいに拡がるようにして滑り込んでくる。新旧の対比がいかにも鮮やかで、うれしくなる。視界がつるつるの黄色一色になり、途端に周囲が明るくなる気さえする。気分もグレーから黄色寄りになる。
きょうは、あたりだ。
銀座駅で降りると、エルメスビルのエスカレーターに乗って地上に出る。 いつもの通勤ルートの締めくくりは、煉瓦敷きの裏通り。
花屋と日動画廊のウインドウを横目に教室のビルへ急ぐ。そして建物に入る前に、必ず空を見上げる。 左右を10階建て以上の高層に挟まれた、縦長の空。
薄雲が拡がっていたり、真っ青だったり、時には、雨が落ちてきたり。
晴れているから頑張ろうとか、占いや自己啓発めいた気持ちは不思議と無い。ああ、きょうの空はこうだ、と、ただ確認する。空がそこにあることに安心しているのかも知れない。
冬は静かな季節だなと思う。どんなに人の多い場所に居ても、夏や春のような声高な感じがない。
年が明けて、十日ばかり。
たくさんの「きょう」が積み重なって、また新たな一年が出来上がっていく。地下鉄に乗って、空を見上げて。
少しずつ変えていける予感が、静かに充ちてくる。
銀座校講師 五十棲さやか
寒すぎる日の青すぎる空 |
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