私は砂浜に座って、道すがら買ってきたハンバーガーと飲み物を膝に載せた。日差しが強い。できれば屋根のあるところや椅子のあるところで、日を避けながら食べたかったけれど、砂浜のどこを見渡してもそんな場所はない。 犬を連れた人が遠くを行く。
季節はよく覚えていないのだが、海の家、の類いが設置される少し前の頃ではなかったかと思う。
波の音。風の音。
鳶の鳴き声。
強い陽射し。
波が来ては、退いていく。
バーガーを一口食べ、飲み物を一口飲み、もう一口、というところで、顔の前でぱしっと音がした。
手に持っていたはずの昼食がもう何処にもなかった。
頭上をひゅるーっと鳶がゆく。
鳥の気配も、何も無い。
ぱしっ
それだけ。
お腹をすかせた空っぽの手に、まぶしい光だけが残った。
その光が、いまは慕わしい。
冬のただなかにあって、あの太陽を、砂浜の照り返しを、幻のように思い出す。
せめて春の海の写真を探し出して眺めるのです |
銀座校講師 五十棲さやか
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。