ちょっと変な作品に魅かれることがある。
今まで見たことがない表現や技法によって美術の歴史が作られてきたことを考えれば、「変」というのも芸術の世界では魅力になりうるのかもしれない。
府中市美術館で「江戸絵画の19世紀」を観た。
亜欧堂田善という画家のことは全く知らなかった。
銅版画や洋画を蘭学者たちの協力で学び修得したそうだ。
ちょっと不気味な雰囲気の銅版画。
その画面は解剖図や地図も手がけたせいもあるのか、濃厚で緻密だ。
こってりした油彩画も描いているが、興味深かったのは「琴士渡橋図」という日本画。
画面左下の対角エリアにX型の岩とその間を流れ落ちる滝。
その上に架かる橋の上を歩く高士。
これが主役だ。
密度が高いのはその部分だけ。
そこからに余白に向かってスケッチ画風に消えてゆく線。
思い切りがよく、描きたいテーマがはっきりしていてなんだか現代風に感じた。
橋の上の人物の体の反り具合は「ジョジョの奇妙な冒険」にでてくるキャラクターみたいだし。
琴士渡橋図
それからおもしろかったのはその田善の弟子、安田田騏による「異国風景図」
象に乗って対岸の町を見つめる人物の絵。
象の上に跨がっているのは、現代日本の女子高生にしか見えない。
そして驚くのが対岸の町に建つビル群。
これもまるで現代の新宿の町みたいだ。
銅版画で西洋の箱形の建物でも観て、たまたまできた形かもしれないが、今の我々が見るとちょっとギョッとしませんか?
異国風景図
そして、いちばん驚いたのは古市金峨の「瀑布図」
滝の絵はよくあるけど、こんなに画面いっぱいに描かれた滝の絵は初めて観た。
右上端にチラッと岩が見えているが、それが無かったら何の絵だかわからない。
縦2メートル近い画面は、ほとんどが水。
思い切りがよすぎる。
しかしその落下する水のスピード感は臨場感たっぷりだ。
観ていると、飛散する飛沫とドドドーッという音が聞こえてきそうだ。
画面いっぱいに描くことで、掛け軸を掛けた部屋の窓から滝が見えているという状況を作り出したらしい。
当時の人からするとディズニーランドの新しいアトラクションみたいに感じたかもしれない。
「今度の新作はすごいですよ。ほら、目の前に滝があるみたいでしょう?」
なんて自慢しながら、お客にお茶でもふるまっている様子が目に浮かぶ。
瀑布図
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。